記事一覧
- 特定健診・特定保健指導とは何か、その目的と概要(1)。
- 特定健診・特定保健指導とは何か、その目的と概要(2)。
- 特定健診、その内容について。
- 特定保健指導、その内容について。
- 特定健診・特定保健指導 基準値と数値の見方。
姉妹サイトもあわせてご覧ください。
・動脈硬化を学ぶ~その概要・予防・食事
・コレステロールを下げる 3分レッスン
・中性脂肪を撃退!~食事・運動・薬 対策のポイント
・人間ドック はじめての受診 4分でポイント理解
・後期高齢者医療制度 5分で概要マスター
・更年期障害 症状と対策~安心を得るために
特定健診・特定保健指導 基準値と数値の見方。
特定健診の検査と特定保健指導で主な対象者をあぶり出そうとしているのは、生活習慣病の代表格ともいえる「糖尿病」、そして「脂質異常症(高脂血症)」「高血圧症」の3つです。
これらはいずれも、すい臓が分泌するホルモン「インスリン」を介した関係が強いと考えられています。
インスリンの分泌量(インスリン抵抗性)に異常が生じると糖尿病や脂質異常症の発病につながりますが、そのおおもとの原因を「肥満(メタボおよびその予備軍)」とみなしているわけです。また体重が増えると、身体は血圧を上げてそれに対処しようとするため、高血圧の症状が出やすくなります。
腹囲またはBMI・血液検査によって基準値を超えた人をスクリーニングした上で、保健指導を通じた生活改善でこれらの発症を予防できれば、最終的に膨れ上がる国民医療費の削減にもつながる、というわけです。
さて国の狙いはわかるとしても、特定健診や特定保健指導を受ける私たちとしては「自分の検査結果の数値が基準値を上回っていたときは、どうしたらよいのか?」ということではないでしょうか。
いや、この言い方は正しくありませんね。どうすればよいかは、すでに特定保健指導で明らかにされています。
しかし特定保健指導を最後まで受けた人が対象者の2割にも満たない現状は、多少数値が悪くても行動していない人があまりに多い、つまり「まだグレーゾーンにいると考えて様子を見ている」か、あるいは「本格的に体調が悪くなるまで病院に行かず放置している」人が多いことを意味しています。
後者は論外なのは明らかですが、仕事などで忙しい毎日、多少血圧が上がったりLDLコレステロールが悪化した程度で、病院に通う時間などとてもとれない…という方は、おそらくかなりの数に上るでしょう。
もしあなたが前者に属する場合、最低でも「特定健診の結果で表示された一つ一つの検査項目の意味と基準値について詳しい知識を持ち、その変化を数年単位でフォローしていくことの大切さ」を、ぜひ心に留めておきましょう。
ちなみに個別項目の意味と基準値・受診勧奨値については、以下をご参照下さい。
「健診検査項目 保健指導/受診勧奨判定値ガイド」(保健指導リソースガイド)
そもそも特定健診が対象としている上記の3つの生活習慣病は、数値を超えた段階でいきなり発症するわけではありません。
関連数値の悪化を伴いながら、数年単位で少しずつゆっくりと悪化していくタイプの病気と言えます。
糖尿病こそ直接に本格的な治療が必要ですが、脂質異常症や高血圧は「動脈硬化を招くサイン」であり、それ自体は警戒すべき症状であるが直接的な病気ではない、という見方もあります。
血圧の最大・最小値や糖尿病判定に関わる国の基準数値は、一定の間隔で基準値が改定されながら今日に至っています。
基本的にそれらをベースとしている特定健診でも、「異常とされる基準値のハードルが少し高すぎるのでは?」といった批判があるようです。
たとえば糖尿病の判定基準となる空腹時血糖・Hba1cでは特定健診・特定保健指導の判定基準が国が採用するメタボの判定基準よりも厳しく設定されるなど、基準値の設定根拠に明確さが欠けるといった批判もあります。
とりわけ血圧の数値は議論を呼びやすいところで、30年ほど前は「最高血圧160mmHg以上または最低血圧95mmHg以上から」高血圧とされていましたが、今日の特定健診・特定保健指導においては「最高血圧130mmHg以上または最低血圧85mmHg以上から」と、ずいぶんハードルが上がっています。
また血圧測定は大変にデリケートなものであり、「最低血圧」は「最高血圧」に比べ測定の誤差が出やすい傾向もあります。
健診の時間帯や測定のやり方ひとつで血圧の計測数値が大きく変わる可能性があることは、頭の片隅に入れておいてよいでしょう。
ただし血圧が高いと動脈硬化を招きやすく心疾患や脳血管疾患が増えることは、これまでの各種調査からみて確かですし、年齢を問わず血圧130/85未満をキープする生活を目指すほうが健康面でベターなことも、間違いなさそうです。
特定健診で高血圧が判明した方は、素直に「生活習慣の改善」をはかるようにしたいものです(高血圧については「高血圧~その症状と食事・生活習慣による予防」もご参照下さい)。
いずれにせよ検査数値になんらかの異常が認められた場合、前年からさらに悪化したのか、ここ数年横ばいなのか、あるいは数値的に改善しつつあるのかといった、いわば「変化の方向」に注目することがポイントです。
数年スパンで数値の変化を比較しながら、生活環境の変化がどう影響しているか、あるいは生活習慣の改善がうまくいっているか等について、時おりチェックしつつ日々の生活に意識的に反映させていくと良いでしょう。
そのためにも毎年の健診の検査結果はきちんと保管しておき、主な項目の数値が基準値に照らしてどう変化しているのかをいつでも確認できるよう、自分なりにわかりやすく記録しておくことをおすすめします。